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◆ ◆ ◆ 長い夏(2)◆ ◆ ◆ 2008/08/09 (Sat) 14:28 30分足らずで医療センターに到着。受付で名前を告げると、すこし離れた廊下の壁沿いにある長椅子で待つように指示された。 お袋はまだ到着していなかった。 後から分かったことだけど、ヘリは高知空港を飛び立ち、一旦医療センターに寄ってDRを乗せて現場に飛び、機内で治療をしながらセンターに搬送するらしい。 ヘリが空港ではなく最初から医療センターに配備されていたら、ずいぶん時間と燃費の削減になりそうな気がするけど……!! そのうち或部屋に通されて簡単な問診?(いや事情聴取)を受けていると、側で無線のやり取りが聞こえた。 「医療センターからりょうま、現在北の風0.2メートルです。」 間もなく来る。 一旦廊下に出て暫く待っていると、再び名前を呼ばれた。 お袋は静かに眠っていた。 ほんとに眠っているとしか思えない穏やかな状態にしか見えなかった。 「息子さんですか?? お母様は相当激しいクモ膜下出血を起こされています。 できれば出血部位を特定して緊急オペをと思ったのですが、あまりにも激しく大きな出血なので、今のところオペに耐えられる状況ではなさそうなんです。 血圧は測定不能で、自発呼吸も確認できませんし、瞳孔も6mm以上と大きく散大していて、いろんな反射も認められません。」 呼吸停止・血圧測定不能・瞳孔散大・反射の消失・・・・・ おそらくは延髄や脳幹付近の激しい動脈破断で、頭蓋内は大変なことになっているであろうことは、僕くらいの知識でも容易に想像できる。 大きく「脳死」という言葉が浮かんだけど僕はそれを口にしなかったし、対応してくださったM医師も、その用語だけは一度も使わなかった。 ・・・・・。 「とりあえず一旦入院していただいて様子を見て安定したら次の段階の治療に移りましょう。」 長い沈黙の後M医師の静かな声が穏やかに聞こえた。 安定・次の段階の治療……。 闇の中の極小さな一条の光はまだ消えていなかった。 -- 一言感想(200文字以内) -- |