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☆今日のつぶやき☆

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◆ ◆ ◆ 最後の贈り物☆◆ ◆ ◆

2008/01/29 (Tue) 9:07

親元を離れて寮生活を始めた5歳の頃から22歳で卒業するまで寮友・学友であり、高校時代に結成したバンド「エメラルド」のベーシストとして社会人になってからも共に活動してきた僚友の森国(もりくに)氏が大動脈乖離で急死したのは06年12月20日。

森国氏の実家は寮の在る高知市の隣の南国市で、幼い頃はほとんど週末毎にお母様が迎えに来られて実家に帰っていた。
そして実家が遠く、年3回の長期休暇くらいしか帰れなかった僕が淋しいだろうということで、お母様は時々僕も一緒に自宅に連れ帰り面倒をみてくださった。
当時の森国邸は農業を営む旧家で、祖父母と両親、そして森国氏と兄上の3世代6人暮らし。
土間(どま)・納屋(なや)・釜屋(かまや)・牛小屋(うしごや)など、聞いたこともない場所や、唐箕(とうみ)・発動機・籾すり機・米つき機など、聞いたこともない道具や機械などが沢山在り、それらにワクワクしながら探検していたことを今でも鮮明に覚えてる。
ゆったりとした時間の中で、お祖母ちゃんは味噌や醤油、そして饅頭などを作り、お祖父ちゃんは牛に餌をやっていた。
お母さんは「佳君のお母さんが作るようなハイカラなものはよう作らんけんどお米はなんぼでも有るきどっさり食べよ♪」と笑顔で言いながら、息子のようにかわいがってくださった。
やがて僕達は大人になり、森国氏のご家族とは次第に疎遠になったけど、お祖父ちゃんやお祖母ちゃんが亡くなったこと、お兄さんが結婚し父親になったこと、お母様が心を病み通院されてること、そしてお父様が亡くなったことなど、折に触れて森国氏から聞いていた。
そして当の森国氏本人が急死して1年経った昨年の秋、突然彼の兄上から連絡をいただいた。
内容は入院中のお母様のために歌を歌ってほしいというものだった。
おばちゃんに会える!!
僕は喜んで快諾した。

冷たい雨の中、お母様の入院されている病院に到着したのは午後1時。
3階の控え室に入り程なくして、森国氏のお兄様御夫妻と長女のKさんが到着。
何十年ぶりかの懐かしい再会だった。
「ごだいの田んぼ」「かいだの田んぼ」「従兄弟のミナコさんとお父様のカズオさん」「カズオさん家の側の階段を上ってこんぴらさんへ」などETC.。
森国家の皆さんは僕の記憶力に驚いてたけど、小学校時代のことながら次々と地名や人名が出てくるのは、きっとそれだけ心に深く刻まれた大切な思い出の各コマだということなんだろう。

午後2時、同じ階にある会場のデイサービス用のスペースに入ると、利用者の皆さんが30名くらい集まっていて、大きな拍手で迎えてくださった。
軽く挨拶をして「やじろべえ」「しあわせ色の風景」を歌う♪
それから、5歳の時に親元を離れ、風に乗って聞こえてくる汽車の音に故郷の両親を思って泣いた幼い日を回想して作った「回想 円行寺口駅にて」を歌い、その頃からの友人である森国氏のことを話して、お母様である「すえ」さんを紹介すると、会場からどよめきが起こった。
「おばちゃん、久しぶりやね、元気やったかえ??」と問いかける僕に、「はい…元気元気」と嬉しそうに照れくさそうに答えてくれたお母様。
丁度この日は彼女の誕生日ということで、会場全体で「Happy birthday dear Sueさん♪」を大合唱♪♪☆
それからコンサート開催の経緯を話し、森国氏のお兄さんを呼んでステージに出てもらった。
彼も昔からフォークソングが大好きで、僕も何度か彼のギターの弾き語りを聴かせてもらったことがある♪
お母様への誕生日プレゼントということで、僕の伴奏で「遠くで汽笛を聞きながら」を熱唱してくれた。
その後会場の皆さんと一緒に春の童謡唱歌メドレー(早春賦・春よこい・春の小川・花)を歌い、昔お袋が歌ってくれた子守歌、そして「母さんの歌」を歌った。
それから「さくら」を歌った後、特別な話をした。
「今の歌の歌詞はきっと子を思う全ての親の願いだと思います。
 もちろんここに居られる森国すえさんも、全盲という運命を背負った息子の正(ただし)君に「健やかに幸せに生きてほしい」と強く強く願ったはずです。
 盲学校卒業以来ほとんど会うこともなく、広島という見ず知らずの地で無念の最期を遂げた正君、高知に帰りたいって淋しそうにぽつりと言った正君を思うと今でも涙がでるけど、彼が素晴らしい歌を残してくれてるので、今から正君に変わってその歌を歌わせてもらいます。
 ええかえおばちゃん、ほんまに正君が作った歌やき、おばちゃんもしっかり聞いちゃってよ。」
「はいはい…佳君、聞きゆうきんね!!」・・・・・。
何度も何度も涙で声が詰まったけど、今までで最高の「決心」を歌うことができたと思う。
最後に「そのままの君で」を歌って1時間のアンプラグドライブを終えた。
会場を通って退場するとき、利用者さん達が様々な病状を伺わせる色取り取りの声と口調で「ありがとう」「よかったよ」「おめでとう」などと口々に声をかけながら暖かく大きな拍手で見送ってくださった。

控え室に戻るとすぐにお兄さんご一家が入って来られ、その直後、病院のスタッフに付き添われてお母様も来られた。
「佳君、まっこと久しぶりやねえ、いっつもラジオ聴きゆうで!!」
「おばちゃん・・・・・」
強く握手をしながら、また森国氏…いやタダシ君の事を思って涙が出た。

今回のライブは森国氏のお兄さんからお母さんへのプレゼントだったと共に、森国氏本人から家族へ、そして僕への最後で最高の贈り物だったように思う。
とにかく心に十分な潤いを貰った1日だった。

-- 一言感想(200文字以内) --


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【Ree】 森国さんのお宅での優しい時間が流れている情景や、病院での佳さんとお母様の会話の際の、お二人の顔の表情までもが思い浮かぶようです…それって、佳さんの文才が優れているっていうより、私の感性の素晴らしさかな?(違うって!笑)「つぶやき」に佳さんの思いが溢れているからだよね。(^^) 「決心♪」は、まず詞だけ読んでから歌を聴くと、イメージとは随分と違い男らしい?曲でした。(^^ゞ
2008/01/31 (Thu) 19:36



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